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仙台地方裁判所 昭和59年(わ)19号 判決 1984年7月13日

裁判所書記官

佐藤勉

本籍

宮城県石巻市大字桃浦字上ノ山二五番地

住居

右同所

鰹鮪餌畜養業

大山與兵衛

大正一三年三月一一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官池上政幸、渡辺登各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、三〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、宮城県石巻市魚町三丁目一番三一号に事務所を置き、大山水産の商号で鰹鮪餌畜養業などを営み、その業務全般を統括しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、餌取引の売上及び仕入れの一部を除外して仮名または無記名定期預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五五年分の実際所得金額が三、八〇八万一、九六二円で、これに対する所得税額が一、四八三万八、二〇〇円であったにもかかわらず、同五六年二月二四日、同市千石町二番三五号所在の所轄石巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七一六万三、九四七円で、これに対する所得税額が一〇五万二、五〇〇円である旨の虚偽の所得税の確定申告書を提出して、そのまま法定期限を徒過させ、もって不正の行為により、自己の同五五年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一、三七八万五、七〇〇円を免れ

第二  同五六年分の実際所得金額が二、五七八万一、一三六円で、これに対する所得税額が八〇九万八、二〇〇円であったにもかかわらず、同五七年三月八日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、欠損所得金額が八一万三、八〇一円である旨の虚偽の所得税の確定申告書を提出して、そのまま法定期限を徒過させ、もって不正の行為により、自己の同五六年分の正規の所得税額八〇九万八、二〇〇円を免れ

第三  同五七年分の実際所得金額が七、五七三万九、六八六円で、これに対する所得税額が三、九〇八万七、七〇〇円であったにもかかわらず、同五八年二月二五日前記石巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八六三万九、八九四円で、これに対する所得税額が一五五万一、五〇〇円である旨の虚偽の所得税の確定申告書を提出して、そのまま法定期限を徒過させ、もって不正の行為により、自己の同五七年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三、七五三万六、二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する昭和五九年一月一二日付け及び同月二七日付け各供述調書並びに大蔵事務官の被告人に対する昭和五八年五月二五日付け、同年八月二四日付け、同年一一月一一日付け、同月一七日付け及び同月二四日付け各質問てん末書

一  大山静夫の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官の同人に対する質問てん末書四通

一  大山敏子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官の同人に対する質問てん末書

一  大山強平の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官の同人に対する質問てん末書

一  大蔵事務官の大山俊夫に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の預貯金等調査書

一  石巻税務署長作成の所得税の青色申告の承認取消し通知書の謄本

一  検察官、弁護人及び被告人作成の昭和五九年四月二七日付け合意書面(ほ脱所得金額の内訳に関するもの)

判示第一ないし第三の事実について

一  被告人の検察官に対する昭和五九年一月一三日付け、同月一八日付け及び同月一九日付け各供述調書並びに大蔵事務官の被告人に対する昭和五八年一〇月一二日付け、同年一一月一日付け及び同月四日付け各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の所得控除調査書及び源泉徴収税額調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

判示第一及び第二の事実について

一  大蔵事務官の被告人に対する昭和五八年九月二九日付け及び同年一一月一五日付け各質問てん末書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(一)

一  被告人作成の五五年分の所得税の修正申告書の謄本

一  押収してある昭和五五年分の所得税の確定申告書一枚(昭和五九年押第四〇号の一)及び同年分所得税青色申告決算書一綴(同号の四)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(二)及び特別減税額調査書

一  被告人作成の五六年分の所得税の修正申告書の謄本

一  押収してある昭和五六年分の所得税の確定申告書一枚(昭和五九年押第四〇号の二)及び同年分所得税青色申告決算書一綴(同号の五)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(三)

一  検察官、弁護人及び被告人作成の昭和五九年六月二二日付け合意書面(同年四月二七日付け合意書面の内容の訂正に関するもの)

一  被告人作成の五七年分の所得税の修正申告書の謄本

一  押収してある昭和五七年分の所得税の確定申告書一枚(昭和五九年押第四〇号の三)及び同年分所得税青色申告決算書一綴(同号の六)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号(脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律)による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の各所為はいずれも右改正後の所得税法二三八条一項に該当するところ、判示第一の罪については右改正前の所得税法二三八条一項後段により、判示第二及び第三の各罪についてはいずれも右改正後の所得税法二三八条一項後段により、それぞれ懲役刑及び罰金刑を併科し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一、三〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野口喜蔵 裁判官 北野俊光 裁判官 潮見直之)

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